先日のブログでは、15-19歳、20-24歳の転出超過が起こっていることに触れました。
転出超過への対策の方向性として、3つご提示しておりました。
①進学先としての魅力度を高める
②就職先としての魅力度を高める
③進学・就職で流出した後のUターンを促進する
(『想像以上にヤバい新潟県の人口減少』について)
本日は、その中で①進学先としての魅力度について、
1.進学時の他都道府県への流出について
2.大学生/専門学校生の他県からの流入について
という2つの観点から、現状を確認し、最後に
3.今後の新潟県が目指す姿について
を論じていきたいと思います。
1.進学時の他都道府県への流出について
新潟県からの学業を理由とした転出者数は令和3年で4,085人です。内訳は、15-19歳が2,455人、20-24歳が1,196人となっています。
転出先は関東が61.3%(うち1都3県が55.4%)を占めており、「新潟県の高校→東京の大学」という流れが主流であることがうかがえます。
推移をみていくと、学業を理由とした転出超過は平成26年の554人を境に、拡大を続けています。
他県への流出が起こっている理由として、二つ考えることができます。
1つは、単純な受け入れキャパシティの問題です。県内の大学の入学定員は、県内の大学進学希望者数の6割程度に留まっています。
2つ目は、新潟県内の大学の魅力度です。約半数の大学が定員割れを起こしていることから、単純なキャパシティの問題だけではないと考えることができます。
その中でも根本的な問題は、2つ目に挙げた大学の魅力度にあると考えています。
2017年から21年までの4年間で、新潟県内では4大学が創設されるなどし、全体の定員は782人、入学者は625人増えました。しかしながら、私立大学を中心に、約半数が定員割れを起こしているという実態もあります。
少し話が脱線しますが、「そもそも地方大学の役割とは何か?」にも触れたいと思います。
世界最先端を走る大学、地域密着を売りにする大学、特定領域に特化した大学など、大学によってカラーはそれぞれです。それを分かりやすく整理したのが、下図です。
大学の特色を、ユニバーサル/ローカル、社会貢献/教育・研究という2つの軸で4象限に整理することができます。
そして、地方の大学の多くが目指すべきは、基本的にはローカル志向になると考えています。
例えば静岡県の常葉大学と静岡県内の市町村等が行っている取り組みでは、学生が地域との交流事業を行っていて、岡山県立大学は岡山県と連携し、地域人材を育成している。このように、地域密着で運営している大学だからこそ実現できるローカル路線というのは、新潟県内の大学が、地元の高校生に選ばれる理由の一つとなりえます。(参考:大学による地方創生の取組事例集)
2.大学生/専門学校生の他県からの流入について
視点を変えて、他県からの転入を見ると、人口ボリュームの多い関東圏に次いで、近隣の東北及び中部地方から多く発生しています。図を再掲しますが、今度は上部の「転入」側です。
私は率直に、「弱肉強食だなぁ」と感じました。関東への人口流出に頭を悩ませているとはいえ、新潟県は本州日本海側では随一の規模を誇っています。ですから裏では、近隣県の若者が新潟に集まってくるということもまた、起こっています。
タイトルにあるとおり、今や全ての地域が、強制的に大学生世代争奪のゼロサムゲームを戦っています。(ゼロサムゲームとは、参加者の利得と損失の総和(SUM)がゼロになる、つまり限られたものを奪い合うようなゲーム)
今後人口減少が続き、各県が自県からの大学生世代の流出を抑制する施策を講じる中で、このまま何の策も講じなければ、他県からの流入は緩やかに減っていくことが予想されます。
3.今後の新潟県が目指す姿について
転出超過=転出数ー転入数であることから、転出数抑制、転入数増加の2つの方向性についての検討を行いました。
既存客維持と新規顧客獲得を比べると、後者の方が難易度が高くコストが掛かります。それと同じで、基本的には転出数抑制を基本方針するべきではないかというのが私の意見です。
新潟の人口減少に歯止めをかけることがそもそもの発想である以上、就職後も新潟に留まる確率を考慮しても、まずは新潟の若者に選ばれるような学びの場を提供することが最優先です。
地域密着でリアルな学びの場を提供すること、新潟の得意領域に絞り込んで世界で戦えるレベルに引き上げることなど、新潟県の高校生が学びたいと思えるような場を提供したいですね。
それが、結果として他地域の人から「○○を学びたいから新潟に進学したい」と、指名で選んでもらうことにも繋がります。
具体的に、大学が果たしていくべき役割や他県の大学での事例などは、追って紹介していきたいと思います。